2014年10月18日

子どもに見せたい物語には、常に大人への戒めがある

子どもを主役にした良い(と大人が思う)物語があると、
「これを子ども達に見せたいね」
という話になることがある。

11月2日のエファジャパン設立10周年記念イベントで上映する
『世界の果ての通学路』もそんなもののひとつである。

何キロもの道のりを何時間もかけて
学校に通う子ども達を追ったこのドキュメンタリーは
「世界にはこんな風に通学してる子もいるんだよ!」
と日本の子どもに見せたい。

学校がつまらない、ゲームばっかりしている、
覇気がない、学級崩壊、いじめ、
(というイメージが横行している)
日本の子ども達に見せたら為になるんじゃないか。

と思えてしまう映画なのである。

(実際、映画自体はなかなか心を動かされる良い作品です)

広い世界を見せることで、
子どもが自分や自分の環境を省みるきっかけになるだろう
ということだと思う。


それに関しては私にも経験がある。

高校生の時、日本の高校を1年休学して
(当時はそれしか選択肢がなかったので)
アメリカの高校生活を経験した。

親元を離れての英語だけでの生活や、文化・習慣の違いは
確かに大変で自由で楽しくて刺激的だったが、
私にとって一番衝撃的だったのは
アメリカの高校生が自分の近い将来に持つ選択肢の多さだった。

日本の高校生に可能なのは、
大学進学(浪人)か就職、の二択。

少なくとも大部分の高校生はそう信じているし、
周囲の大人もそれを望んでいるだろう。

でも、アメリカ北西部の小さな町の公立高校では、
大学入学前に1年間伝道活動をする
(自分の属するキリスト教会の活動に専念する)とか、
とりあえずしばらく旅行してから進学か就職か考えるとか、
一応進学するけど専攻はあとで考え直すとか、
高校卒業前に結婚するとか…。

そりゃ、外国の話だし、
そのまま自分に当てはめることができないのは
分っていたけれど、
そうした当時の私には考えられなかった道が
ごく当たり前に存在する社会もある事に気が付いて、
ひどく解放された気持ちになった。

ああ、それでも普通に生きていけるんだな、と。

日本の高校生活もそれなりに楽しんではいたし
卒業後の進路にそれなりに希望を持ってもいたけれど、
進学や就職を考えると否応なしに取り囲まれる閉塞感から
自由になれたのは有り難かった。


そうやって、子ども自身の視野が広がることによって
救われたり、意欲が出たり、態度が変わったり、
することも大いにあるだろうと思う。


確かに、そうなのだけれども。


じゃぁ、その先は?と思ってしまうのだ。

なぜ学校がつまらないのか、なぜ覇気がないのか、
なぜ学校でいじめが無くならないのか、
その責任は本当は誰にあるのか。

(実際には大部分の子ども達は
 それなにり毎日を楽しみつつ
 がんばってると思うんですけどね))


アメリカから帰った私は
精神的には成長して、より自由になったかもしれないが、
やはり進学か就職かの二択しかないのに変わりはなかった。

この映画を子ども達に見せたとして、
そのあと彼らが帰っていく先は
家庭も学校も社会も、映画を観る前と同じままだろう。

子どもたちが変わる(ことが必要だったとして)
ために本当に必要なのは、
子どもの考えや気持ちを変えることよりも、
かれらをそんな気持ちにさせているものを変えることだ。


今も昔も、子ども達は与えられた環境に
一生懸命適応して生きているだけだ。

そして大人にとっても、自分が置かれている環境は
自分で作ったというよりも、与えられている感覚に近いと思う。

それでも、より良くしようと努力することはできるし、
「今」に働きかける責任と能力を持っているのは
子ども達ではなく我々大人のほうである。


と、内容とは全く関係ないけれど
そんな思いを強くするきっかけになったこの映画。

巷でも評判になっていて、なかなか良い作品(しつこい?)
なので、機会があったら、ぜひ観てみてください。
(宮)


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